「問い合わせが増えない」「離脱が多くLTVが低い」という課題は、コミュニケーション設計の見直しで改善が可能であり、BtoBマーケティングにおいて欠かせない考え方です。重視すべき理由、便利なフレームワーク5つ、代表的なコミュニケーション施策を解説します。
コミュニケーション設計
コミュニケーション設計は、マーケティング活動を具体施策に落とし込む為、「誰に、どの情報・コンテンツを、どのタイミングで提供するか」戦略的に設定することです。売上向上はもちろん、ブランディングや認知拡大、リピーター獲得など、さまざまな目的で応用できます。
BtoBでコミュニケーション設計の重要理由
BtoBは検討期間が長く複数の意思決定者が関与するため、購入プロセスが複雑です。そのため「他社もやっているから」と明確な目標なしに施策を実施しても、成功しないばかりか失敗原因すらもわからず終わってしまうということにもなりかねません。
失敗1. 商談のアポイントが取れない
例えば資料をダウンロードした顧客やイベントの参加者は、まだ情報収集・比較検討の段階です。自社と顧客が接点をもった後だとしても、ニーズが顕在化していないため、警戒され、不快に思われてしまいます。この場合、個別相談やメルマガ配信など長期的なフォローを行い、興味・関心を高めることに注力しなければなりません。
失敗2. 問い合わせが増えない
いくらプロモーションなどを行っても問い合わせにつながらない場合、発信している情報が「本当に顧客の求めるコンテンツなのか」を見直すことが大切です。このとき、企業がアピールしたいコンテンツではなく、ターゲットのニーズに沿った訴求内容にするよう注意が必要です。
コミュニケーション設計で活用されるフレームワーク5選
ここでは、コミュニケーション設計に欠かせないフレームワークをご紹介します。
- STP分析
STP分析は、ターゲットを明確にするためのフレームワークです。それぞれS:セグメンテーション(細分化)、T:ターゲティング(抽出)、P:ポジショニング(差別化)の頭文字で、S→T→Pのステップで分析します。 - ペルソナ
ペルソナとは、自社が狙うべきターゲットを、架空の人物像に落とし込んだものです。BtoBは関与者が多いため、ターゲットの属性に応じて複数作成します。 - カスタマージャーニー
ユーザーが認知から購買に至るまでの工程を可視化します。ペルソナを主人公とし、見込み顧客のニーズや情緒的変化、タッチポイントなどを把握していきます。 - 3C分析
3C分析はCustomer(顧客)、Competitor(競合)、 Company(自社)の3つの視点から、強み・弱みを分析するためのフレームワークです。効果的なマーケティング施策や市場戦略の検討に役立ちます。 - SWOT分析
SWOT分析は、外部環境やリスクを考慮した戦略立案に有効な手法です。Strengths(強み)Weaknesses(弱み)Opportunities(機会)Threats(脅威)の4つの要素から、改善点や市場でのポジションなどを分析します。
コミュニケーション施策の代表的な手法
ここでは、コミュニケーション設計における代表的な施策について紹介します。なお、あくまでも顧客目線で「どのような施策が求められているか」をベースに手法を検討することを忘れないようにしてください。
- オンライン・オフライン広告
認知拡大のための新聞やテレビCMなどのメディア広告のほか、検索エンジンやSNSなど運用型のWeb広告が代表的です。
- SNS
Facebook、Instagram、YouTube動画、Twitter(X)などでメッセージの発信を行います。ファン獲得やブランド力アップにも有効です。
- コンテンツマーケティング
ホワイトペーパー作成や、コラムなどオウンドメディア運用を通じて、ユーザーの課題を解決できる自社商品などの情報を公開します。
- メール
メールやメルマガ配信で、顧客と継続的にタッチポイントを作る手法です。潜在ニーズや興味を引き出すなど態度変容を促す役割もあります。
- イベント・展示会
製品の体験イベントや展示会を開催し、新規顧客の獲得につなげます。最近ではオンラインでのセミナー(ウェビナー)の開催も活発です。
- DM・チラシ
既存顧客に直接DM(ダイレクトメール)やチラシなどを送付します。
- プレスリリース
プレスリリースは、企業の動きを新聞やWebメディアに掲載してもらう手法です。自社の信頼度アップや認知獲得を狙います。
- 人的販売
人的販売とは訪問販売や電話、実店舗での接客など、対面で行うセールスです。直接対応や提案が可能なだけでなく、不満や要望などリアルな消費者の反応を把握する場にもなります。
戦略的なコミュニケーション設計の作成方法
コミュニケーション設計に一貫性を持たせるためには、正しい手順に沿って制作するとスムーズです。
- ターゲットの明確化
STP分析で自社のターゲットを絞りましょう。既存顧客を属性ごとにセグメント分けすれば、ターゲット層を可視化しやすくなります。 - 自社の市場ポジショニングの明確化
次に、3C分析やSWOT分析を活用して、どの立場からターゲットへアプローチすべきかを検討します。競合との優位性の確立、提供する価値など、自社にしかないメリット・特徴を整理します。 - ペルソナの設定
ペルソナ設定では、ターゲットに沿って顧客データを分析し、理想のユーザー像を具体化します。社内の営業担当者やカスタマーサポートなどの窓口担当者にもヒアリングを行い、イメージ写真などを利用するとより効果的です。 - カスタマージャーニーの作成
ペルソナのストーリーを購買プロセスごとに可視化し、ユーザー行動や心理状態、タッチポイントをシナリオ化してください。 - 施策の立案
コミュニケーション施策から、最適な施策を選定します。このとき、ペルソナに合わせて訴求力の高いチャネルやクリエイティブ、予算などのバランスもあわせて整理しておくことが大切です。 - KPIの設定
施策の目標(ゴール)を達成するためのKPIツリーを作成します。KPIは客観的な数値指標を入れ、データ計測の手段を決めておくことがポイントです。 - 実行と効果検証
複雑なBtoB市場で成果を上げ続けるためには、施策実行後の効果検証は欠かせません。素早くPDCAサイクルをまわし、常にコミュニケーション施策の改善を続けることを意識してみてください。
LTVを向上させるコミュニケーション設計
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、顧客が一生涯にどれだけ自社へ利益をもたらすかを示す指標です。ここではLTV向上につながるコミュニケーション設計の改善ポイントを2つご紹介します。
検討プロセスからの離脱ポイントを見つけカバーする
LTVアップには新規顧客獲得に加え、既存顧客の離脱率や解約を防ぐことも重要です。まずは顧客データを分析し、顧客目線でみた自社サービスに欠陥がないかチェックしましょう。Webサイトの使用感が悪く休眠した顧客や、過剰なメールや電話の結果離脱した顧客など、原因を見つけて改善すればLTV向上につながります。
ツール活用で最適なアプローチ
もし効率的にデータ分析・改善したい場合、マーケティング支援ツールの導入を検討しましょう。顧客へのフォローや関係構築には「CRM」、LTV向上に不可欠なOne to Oneマーケティングの自動化・効率化には「MA」など、自社に必要なツールを見極めて、うまく取り入れていくことが重要です。