環境意識の高まりとともに、企業のサスティナブルな取り組みが注目を集めています。特に梱包資材の選定は、環境負荷を軽減し、持続可能なビジネスモデルを構築するための重要な要素です。
本記事では、SDGs目標達成に貢献するサスティナブルな梱包資材を紹介し、その選定方法や導入メリットを詳しく解説していきます。これからのビジネス運営における重要なヒントを見つけてください。
SDGsとサスティナブル梱包資材の関係
SDGs(持続可能な開発目標)は、持続可能な発展を目指す17の目標を指します。
そして企業がSDGs達成に貢献する方法のひとつが、サスティナブルな梱包資材の導入です。SDGsとサスティナブル梱包資材の関係を正しく理解し、その選定と導入に役立てましょう。
SDGsとは
SDGsとは、2015年に国連で採択された「2030年までに達成したい国際目標」です。具体的な内容は、貧困の撲滅・飢餓の解消・ジェンダー平等・気候変動対策など多岐にわたり、17の目標と169のターゲットから構成されています。
SDGsは政府だけでなく、企業や市民社会も含めたすべてのステークホルダーが協力して取り組むべきグローバルな課題です。日本でも2020年にレジ袋が有料化されたことを機に「サスティナブル」が改めて注目を集めており、消費者の意識も大きく変化しています。
サスティナブル梱包資材がSDGs達成にどう貢献するか
サスティナブルな梱包資材とは、持続可能な資源を使用し、環境に配慮して作られた梱包資材です。このような資材は廃棄後も環境負荷が少なく、地球に優しい選択肢として注目を集めています。
例えば、再生紙やリサイクルプラスチックで作られた梱包資材は廃棄物の削減に貢献し、製造時のCO2排出を抑えて環境負荷の低減にも寄与します。
サスティナブル梱包資材を使用することにより目標達成に貢献できるSDGsの項目は、以下のとおりです。
- 目標12「つくる責任 つかう責任」
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」
- 目標14「海の豊かさを守ろう」
- 目標15「陸の豊かさも守ろう」
サスティナブル梱包の現状と課題
サスティナブル梱包が世界中で注目を集めている中、日本国内におけるSDGs達成への取り組みは、残念ながら世界に後れを取っているのが現状です。
各国のSDGs達成状況を分析しランキングにした「SDG Index and Dashboards Report」の2024年版によると、上位はフィンランド、スウェーデンなど欧州の国々が占めています。一方、日本は18位とまだまだ対応が不十分です。
日本でエコフレンドリーな梱包資材を普及させるには、企業の努力だけでなく消費者の理解と協力が不可欠です。企業はサスティナブル梱包の導入と同時に、取り組みの重要性を広く周知し、消費者にその利点を伝える努力が求められます。
参照元:Sustainable Development Report 2024
サスティナブルな梱包資材の種類
サスティナブルな梱包資材の選択は、企業の環境への配慮と社会的責任を示す重要なステップです。
このセクションではサスティナブル梱包資材を「再生可能素材」「リサイクル素材」「生分解性素材」の3つのカテゴリーに分け、具体的な種類とその特徴を詳しく説明します。
これらの情報をもとに、どの素材をどのように活用していくか考えてみましょう。
再生可能素材
再生可能素材は、自然界から持続的に供給される資源を利用して作られる梱包資材です。代表的なものには、再生紙やバガス(サトウキビの搾りかす)、コーンスターチなどがあります。
これらの素材は使用後も自然に戻りやすく、環境への負荷が少ないのが特徴です。また、再生紙のように何度でも再利用できるものもあり、資源の循環利用を促進します。
企業が再生可能素材を選ぶことは、持続可能な消費と生産のパターンの確立、そして環境保護への貢献に繋がります。
リサイクル素材
リサイクル素材は、使用済み製品を再加工して新たに作られる資材で、リサイクルプラスチックやダンボールが代表例です。
リサイクルプラスチックは、使用済みプラスチック製品を再加工し、新たな包装材として利用され、プラスチック廃棄物の削減に寄与します。
一方、ダンボールは輸送や保管における梱包資材として一般的で、ほぼ100%リサイクルが可能です。日本ではリサイクル率が95%を超え、使用済みのダンボールは新たなダンボールや紙製品の原料として再利用されています。
リサイクル素材は廃棄物を減らし、環境への負荷を大幅に軽減する重要な役割を担っています。
生分解性素材
生分解性素材は、自然環境中で微生物の働きによって分解される素材です。
代表的なものには、生分解性プラスチックやセルロースフィルムなどがあります。これらの素材は使用後に自然環境中で分解されるため、廃棄物として残らず土壌や水質を汚染しません。
生分解性プラスチックは、トウモロコシなどの植物を原料として作られ、自然環境中で数ヶ月以内に分解されます。また、セルロースフィルムは木材パルプを原料とし、包装材としての利用が広がっています。
生分解性素材の導入は、環境に優しい取り組みを強化したい企業にとって有効な手段です。
具体的なサスティナブル梱包資材9選
サスティナブルな梱包資材の導入は、企業が環境保護を実践するために欠かせません。
このセクションでは、具体的な9つのサスティナブル梱包資材を取り上げ、それぞれの特徴と利点を詳しく解説します。環境への配慮とコスト効率を両立できるよう、最適な梱包資材を選定する際の参考にしてください。
【外装箱】FSC®認証付きダンボール
日本のダンボールは95%が回収されており、90%以上が再生紙で作られています。製造時のCO2排出量も少なく、環境に優しいエコ素材です。
中でもFSC®認証付きダンボールは、持続可能な森林管理を実施していることを示す認証ロゴが付いています。認証を取得するためには、法律の遵守・労働者の権利・環境価値など多岐にわたる項目をクリアしなければなりません。
そのため、FSC®認証ロゴ入りのダンボールを使用することで、企業は森林資源の保護に貢献でき、消費者に対しても環境への配慮を強調できます。
【外装箱】紙製クッション封筒
紙製クッション封筒とは、片面ダンボール封筒や紙製の緩衝材がついている封筒を指します。これらはリサイクル素材や生分解性素材を使用して作られており、脱プラの取り組みとして環境に優しい梱包資材です。
従来のエアクッション付き封筒に比べて水濡れにはやや弱くなるものの、厚みがなく保管スペースを大幅に削減できるのが強み。また、緩衝性もエアクッション付きのものと変わりません。
廃棄時に緩衝材を分別する手間もなくなるため、紙製クッション封筒の導入は企業と消費者の双方にとってメリットがあります。
【緩衝材】コーンスターチ製バラ緩衝材
コーンスターチ製バラ緩衝材は、トウモロコシを原料として作られる繭玉状の粒緩衝材です。使用後は自然環境中で分解されるため、リサイクルが困難なプラスチック製品と比べて環境への影響を軽減できます。
また、軽量でクッション性が高く、衝撃吸収性に優れているため実用性も抜群です。特に精密機器や割れやすい製品の梱包に適しており、プラスチック製緩衝材の代替として活用することで、SDGs達成に貢献できるでしょう。
【緩衝材】紙パッキン
紙パッキンは細かく裁断された紙製の緩衝材で、梱包時に製品を保護するために使用されます。軽量でありながら優れたクッション性を持ち、割れやすい製品や精密機器の輸送に最適です。また、見た目がシンプルで美しく、商品を引き立てる効果もあります。
リサイクル紙を利用しているため環境負荷が少なく、使用後は簡単にリサイクルが可能です。消費者にとっても廃棄が容易で、エコフレンドリーな選択肢として評価されています。
【緩衝材】エンボス加工紙
エンボス加工紙は凹凸加工が施された紙素材で、リサイクル紙や持続可能な資源から作られているものが多くあります。そのため製造時のエネルギー消費が少なく、CO2排出量の削減にも寄与できます。
エンボス加工紙の最大の特徴は、優れた衝撃吸収性と柔軟性です。さまざまな形状の製品に対応でき、壊れやすいアイテムや精密機器の梱包には特に向いています。
また、使用後も容易にリサイクル可能で、消費者にとっても分別の手間がありません。
【緩衝材】巻きダンボール
巻きダンボールはリサイクル紙を使用して作られているため、環境に優しい選択肢です。
細かく波打った形状を持つダンボール素材でできており、優れた緩衝性能と柔軟性を備えています。そのため、製品をしっかりと包み込み衝撃や振動から守ることができます。また、軽量で取り扱いが容易なため、梱包作業の効率が向上するのもメリットです。
使用後は簡単にリサイクル可能で、持続可能な緩衝材として多くの企業に採用されています。
【緩衝材】クラフト紙・ボーガスペーパー・更紙
クラフト紙・ボーガスペーパー・更紙は、いずれも高い緩衝性能と環境への配慮を両立した梱包資材です。
- クラフト紙
丈夫で破れにくい特性を持ち、製品を保護するための包材や詰め物として広く利用されています。リサイクルしやすく、再生可能資源から作られるのが一般的です。
- ボーガスペーパー
柔軟かつ軽量な素材で、繊維構造が緩衝材としての役割を果たします。使用後もリサイクル可能で、環境負荷を軽減する優れた選択肢です。
- 更紙
新聞や印刷物の端材を利用して作られるため、コストパフォーマンスが高く、リサイクルの一環として利用できます。クッション材や詰め物として効果的です。
これらの素材は梱包作業における環境への影響を最小限に抑え、持続可能な緩衝材として多くの企業に採用されています。
【梱包材】薄葉紙
薄葉紙は主に再生紙や持続可能な資源から作られており、その製造過程でのエネルギー消費も比較的少ないため、CO2排出量の削減に寄与します。また、リサイクルが容易で消費者にとっても廃棄時の分別が簡単です。
質感としては透けるほど薄く軽量で柔らか。製品を優しく包み込むことで傷や汚れから守る役割を果たします。特に、繊細な商品や贈答品の包装に適しており、衣服を守ったりブーケを包んだりなど、美しい仕上がりが求められる場面で重宝されています。
【梱包材】セルロースフィルム
セルロースフィルムは、木材パルプを原料とする生分解性のフィルムです。
使用後は自然環境中で分解され、土壌や水質を汚染しないため、プラスチックフィルムの代替として環境に配慮した選択肢となります。また、バイオベースの素材であるため化石燃料の使用削減にも効果的です。
透明度が高く美しい見た目から、活用方法としては食品梱包やギフトラッピングに向いています。サスティナブル梱包資材を使用して環境負荷を軽減しつつ、見た目にもこだわりたい企業にとっては良い選択肢です。
サスティナブル梱包資材の導入メリット
サスティナブル梱包資材を導入することで、企業は環境保護と経済的メリットの両方を享受できます。
このセクションでは、環境への配慮、企業イメージの向上、コスト削減の3つの主要なメリットについて詳しく解説。企業がサスティナブルな梱包資材を導入することの重要性と、その具体的なメリットを掘り下げていきます。
環境への配慮
環境への配慮は、SDGs目標達成に向けた重要な取り組みの一環です。サスティナブルな梱包資材の導入は、以下の点で環境保護に大きく貢献します。
- 廃棄物の削減
リサイクルや生分解が可能な素材は、廃棄物の削減に効果的です。 - 資源の循環利用
再生可能な素材やリサイクル素材の使用は、資源の有効活用を促進します。 - エネルギー消費の削減
リサイクル素材を使用する方がエネルギー消費が少なく、CO2排出量が減少します。 - 循環型経済への貢献
資源の再利用を促進し、循環型経済の推進に役立ちます。
エコフレンドリーな梱包資材の採用は、地球資源の有効活用と環境保護を両立させる一石二鳥の取り組みです。
企業イメージの向上
サスティナブル梱包資材の導入は、企業イメージの向上に大きく貢献します。なぜなら、消費者は環境に配慮した取り組みに高い評価を与える傾向があるからです。
サスティナブル梱包資材の使用は企業が地球環境への責任を果たしている姿勢を示すものとして認識されます。消費者は自らが利用する企業が持続可能性を重視していることを知ることで、その企業に対する信頼感を高めるのです。
そのため、サスティナブル梱包資材の採用は、企業イメージの向上と消費者の信頼獲得に直結している重要な要素と言えます。
コスト削減
企業がサスティナブルな梱包資材を導入することで得られる重要なメリットのひとつが、コスト削減です。
サスティナブルな梱包資材は再生可能素材やリサイクル可能な素材から作られており、従来の梱包資材に比べてコストを削減できる場合があります。さらに、環境に配慮した資材を使用することで、廃棄物処理費用や環境負荷を減らすことも可能です。
また、サスティナブルな梱包資材は軽量なものが多く、運搬コストを削減できます。初期投資は必要になりますが、企業は経済的なメリットを享受しつつ、持続可能な運営を実現できるでしょう。
サスティナブル梱包資材導入のポイント
サスティナブル梱包資材を導入する際には、適切な資材選定、コストと効果のバランス、サプライチェーン全体での取り組みが重要です。
このセクションでは、これらのポイントについて詳しく説明し、企業が効果的にサスティナブル梱包資材を導入するための具体的なアドバイスを提供します。環境への影響を最小限に抑えつつ、経済的な利益を最大化する方法を確認しましょう。
適切な資材選定
サスティナブル梱包資材を導入する際は、各資材の長所・短所を把握し、製品の特性や輸送条件に合ったものを選ぶことが大切です。
また、供給者との連携も重要です。信頼できるサプライヤーとパートナーシップを築き、安定供給を確保しましょう。もちろん、品質管理や安全性の確保も考慮すべきです。
適切な資材選定をおこなうことで、企業は環境への負荷を最小限に抑えつつ、効果的な梱包を実現できます。
コストと効果のバランス
サスティナブルな梱包資材は、コスト削減や価値提供の面で多くのメリットがありますが、その恩恵を享受するためには一定の投資が必要となります。そのため、導入の際は長期的な効果を考慮することが大切です。
投資回収期間は企業ごとに異なりますが、エコフレンドリーな取り組みは顧客満足度やリピート率の向上にも繋がることを理解し、総合的なコストパフォーマンスを評価しましょう。
コストと効果のバランスをしっかり考えたうえでサスティナブル梱包資材を導入すれば、経済的メリットを最大限に引き出すことができます。
サプライチェーン全体での取り組み
サスティナブル梱包資材の導入は、企業単体の取り組みだけでなくサプライチェーン全体での取り組みが重要です。供給者との連携を強化し、物流の効率化や廃棄物の削減に努めることで、持続可能な経営を実現しましょう。
サプライチェーン全体でのサスティナブル梱包資材の導入は、CO2排出量の削減や自然資源の保護に効果的です。また、企業の信頼性とブランド価値を向上させ、消費者のエコ意識にも応えられます。
サスティナブル梱包資材の導入のプロセス
企業がサスティナブル梱包資材を導入する際のプロセスは、以下のステップに分けられます。
- 現状分析
既存の梱包資材とプロセスを評価し、環境への影響を分析します。
- 代替素材の選定
新しい梱包資材を選定します。
- サプライチェーンの調整
新しい梱包資材の供給を確保します。
- デザインとテスト
新しい梱包デザインを開発し、テストします。
- コスト分析
新しい梱包資材のコストを分析します。
- 内部教育
新しい梱包資材の使用方法と重要性を教育します。
- 実装
新しい梱包資材を実際に導入します。
- パフォーマンスのモニタリング
新しい梱包資材のパフォーマンスと環境への影響を継続的にモニタリングします。
- フィードバックの収集と改善
消費者やクライアントからのフィードバックを収集し、改善します。
- 報告とコミュニケーション
取り組みと成果をステークホルダーに報告し、透明性を確保します。
これらはサスティナブル梱包導入の基本ガイドラインです。企業の規模や業界によってプロセスは異なります。
サスティナブル梱包資材導入の成功事例
サスティナブルな梱包資材の導入がSDGsの達成にどれほど貢献できるか示すために、国内外企業における成功事例を紹介します。
- IKEA
スウェーデンの大手家具企業IKEAは、2028年までに消費者向け梱包のプラスチック使用を廃止する取り組みを進めています。
再生可能素材を用いるなど、さまざまな取り組みにより2023年度のGHG排出量を、2016年度に比べCO2換算で22%削減しています。
- ミズノ
日本のスポーツ用品大手ミズノは、2030年までに梱包資材の環境負荷を大幅に削減する目標を掲げています。
具体的には、2021年11月より主力商品であるシューズのボックスを100%リサイクル紙に順次切り替えており、CO2排出量を年間約160トン削減する見込みです。
成功事例から学び、自社の取り組みに活かすことで、持続可能なビジネスモデルを実現しましょう。
まとめ:サスティナブル梱包でSDGs実現に向けた一歩を
再生可能素材やリサイクル素材、生分解性素材を使ったサスティナブル梱包資材の導入は、SDGs達成への具体的なアクションとなります。同時に、環境保護と経済的成功を両立させる企業の重要な一歩です。
成功事例を参考に資材選定とコストバランスを考慮し、サプライチェーン全体での取り組みを進めることで、持続可能な発展と社会的責任を果たすことができます。
サスティナブルな梱包資材を通じて、信頼を得ながら環境に優しいビジネスモデルを構築しましょう。