2025年1月31日、楽天グループは出店者向けの一大イベント「楽天新春カンファレンス2025」を開催しました。
本記事では、代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏、楽天市場担当役員の松村亮氏、システム開発担当役員の小林悠輔氏の講演をもとに、楽天市場の今後の戦略を詳しく解説します。
三木谷浩史氏:AIとモバイルが創る楽天グループの未来
AIの進化とビジネスへの影響
三木谷氏は講演の冒頭で、2024年に世界で起こった変化を振り返り、特にインターネットとAIの役割がますます重要になっていることを強調しました。
「2024年は、能登半島地震やアメリカ大統領選など、日本のみならず世界的に大きな出来事がありました。
その中で、インターネットとAIの影響力がこれまで以上に拡大しています。」
AIの進化により、EC業界における消費者の購買行動やマーケティング手法が大きく変わりつつあります。
楽天市場では、AIを活用することで、より効率的で精度の高いサービスを提供する方針を示しました。
楽天市場におけるAI活用の進展
楽天グループは「トリプル20」戦略を掲げ、マーケティング効果の20%向上・オペレーション効率の20%向上・クライアント(出店店舗)効率の20%向上を目指しています。
1. AIエージェントと未来展望
三木谷氏は2030年までにAIエージェントが登場し、取引をAIが自動で行う未来を予測しました。さらに、2045年には**シンギュラリティ(技術的特異点)**に達する可能性があると述べ、「AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使いこなすことが重要だ」と強調しました。
2. 日本語LLM「Rakuten AI-7B」とその進化
楽天は独自の日本語LLM(大規模言語モデル)「Rakuten AI-7B」を開発し、楽天市場に特化した高い効率性を備えたAIを展開しています。
さらに、これを発展させた「Rakuten AI 2.0」や、スマートフォン向けの「Rakuten AI 2.0 mini」も計画中です。
3. 楽天市場のAI活用事例
- 検索結果ゼロのケースが98.5%減少
- 流通総額(GMS)が5.3%向上
- AIを活用したレコメンド経由の購入率が59%増加
- 楽天市場の広告売上が4%増加
- AIを活用した商品画像の自動生成で作業時間を90%削減
- ECコンサルタント(ECC)の業務効率が10.7%向上
松村亮氏:楽天市場の事業戦略と成長への道筋
楽天経済圏の最大活用
松村氏は、楽天カード・楽天モバイル・楽天ポイントなどの楽天エコシステムを活用し、ユーザーの購買体験を最適化する方針を示しました。
- 楽天カード&楽天モバイル利用者は、楽天市場での購買額が1.7倍に増加
- 楽天モバイル契約者数が830万人を突破し、さらなる拡大を図る
- 楽天モバイルユーザーは、非ユーザーに比べ楽天のサービスを平均2.4個多く利用
- 「楽天モバイル最強感謝祭」の成功により、ユーザー1人当たりの月間購入額が1万3444円増加
マーケティング戦略の強化
- 楽天スーパーSALE・お買い物マラソンの最適化
- 楽天市場アプリの利用増加(前年比20%以上増)
- SNSを活用したプロモーションの拡充
物流改革とオペレーション最適化
- 最強翌日配送の強化により、配送スピードを向上
- 物流拠点の最適化を推進し、効率的な配送網を構築
小林悠輔氏:楽天市場のシステム戦略
AIアシスタントの進化
小林氏は、楽天市場の店舗運営支援ツール「RMS AIアシスタント ベータ版」が導入から1年を迎え、店舗の業務効率化が大きく進展したことを報告しました。
- 1万2000店舗がAIを利用し、日々の業務に活用
- 商品説明文の自動生成や広告最適化により、業務の負担を軽減
物流と検索の最適化
- 最強翌日配送の導入により、流通スピードを向上
- 検索アルゴリズムの改善により、商品露出度を向上し、コンバージョン率を高める施策を展開
未来のEC戦略
楽天市場は、AIを活用した検索・広告最適化・顧客データ分析を強化し、今後のEC市場における競争力を高めることを目指しています。
まとめ:「AIなくして未来なし」
三木谷氏は、「No AI, No Future(AIなくして未来なし)」という強いメッセージを発信し、今後のEC業界においてAI活用が不可欠であることを訴えました。
楽天グループは、「RMS AIアシスタント」や「楽天AI大学」 を提供し、出店者がAIを活用して成長できる環境を整備しています。
「AIを使いこなせない企業は生き残れない時代が来ています。AIを積極的に活用し、ビジネスの成長につなげていきましょう。」
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